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パッシブデザインで自然と共に暮らす家のつくり方
光熱費ダウンで快適アップ!パッシブデザインで自然と共に暮らす家のつくり方
パッシブデザインとは、エアコンなどの機械に頼りすぎず、太陽の熱や光、風といった自然エネルギーを最大限に活用して、快適で省エネな住まいを実現する設計手法のことです。
言い換えれば、「最小限の光熱費で夏は涼しく、冬は暖かく、風が通って、明るい家」を実現する家づくりです。
そんな家づくりを叶えるためには、5つの手法を適切に建物に組み込む必要があります。
今回はパッシブデザインの5つの手法をご紹介します。
上記がパッシブデザインに欠かせない5つの手法です。
これらは、様々なところで複雑に対立し合うことがあるので、いかにうまくその対立を解消するかがパッシブデザインの最大のポイントになります。
また、5つの手法は季節によって使い分けられます。
1.断熱
5つの手法の中で、断熱は一番馴染みのある言葉ではないでしょうか。
断熱性能を高めることは建物全体の保温性能を向上させ、様々なメリットを与えてくれます。
このメリットはとても大きく、逆に一定の断熱性能が確保されないときのデメリットがとても大きいため、建物の一定以上の断熱性能を組み込むことがパッシブデザインのベースをつくることになります。
■断熱性能を表す指標
建物全体の断熱性能の指標として「UA値」があり、実際にその建物がどの程度の断熱性能を持っているかを知るには、こうした指標を見ることが確実です。
SENKOの基準はUA値0.46W/㎡K以下
冬の気温が氷点下になる北海道と同じレベルの数値です。
■断熱性能を高めることによる冬のメリット
断熱材を適切に選ぶ等により断熱性能を高めることによって建物の保温性も高まり、冬季の大きなメリットが得られます。
・小さな熱で部屋を暖めることができる。また暖房していなくても一定に室温が保たれる。
・暖房していると部屋と暖房していない部屋との温度差が小さくなる。
・窓、床、壁などの表面温度が高く保たれる。
ただし、断熱性能の向上だけでは、夏期も涼しく快適に過ごせるわけではありません。
断熱性能の向上は暑い夏には、冬と違って悪く働くことがありますが、後々ご説明します『日射遮へい』が夏の快適性に重要な役割を担います。
2.日射熱利用暖房
日射熱利用暖房とは、その名の通り、冬に日射熱を室内に取り入れて暖房として利用する設計手法です。
断熱性能を一定以上に高めた建物において窓からたくさんの日射熱を獲得することで、出来る限り多くの熱を室内に留まるようにし、その熱を夜間にも暖房として使います。
手法として重要になるのが、次の3点です。
①集熱・・・日射熱を取り入れるために日の入る窓(主に南面の窓)を大きく取る
②断熱・・・入ってきた日射熱を逃がさないために断熱性能を高める
③蓄熱・・・入った日射熱を蓄えておくために蓄熱性能を整える
断熱性能の向上はそれほど難しいことではありませんが、集熱は敷地条件が厳しく日射が入らない場合には厳しくなります。
また、蓄熱性能をどこまで確保するかは、夏にも影響することから一段階高いスキルが必要となります。
設計前には、事前にしっかり敷地の周囲確認を行い、シミュレーションをしながら有効に設計していくことがとても重要です。
3.日射遮へい
日射遮へいは夏のパッシブデザインの基本であり、冷房時にも取り除く熱を減らすという意味で省エネルギーにつながります。
日射遮へいの手法
①窓ガラスと窓まわりに工夫して、窓から入る日射を防ぐ。
②断熱によって、屋根や外壁から室内に入る熱量を少なくする。
③通気層や換気によって、屋根や外壁から室内に入る熱量を少なくする。
④屋根や外壁の仕上げ材の選択によって、屋根や外壁に当たった日射をはじく。
⑤植栽や外構の工夫によって、外壁に当たる日射量を少なくする。
この5つすべてをとらえて日射遮へいのレベルを上げていきますが、一番重要なのは、①窓から入る日射を防ぐことです。
室内に入ってくる日射熱は、窓の開口部から入ってくる量がもっとも多く、全体の約78%を占めるほどです。
窓まわりの工夫には、窓自体の性能だけでなく、日除け部材を使用することで日射遮へいのレベルを大きく引き上げることができます。
たとえば、LOW-E複層ガラスの場合に日射をそのまま当てるのと、外付けブラインドを設置し閉めた状態にするのでは、日射が入る量が4倍以上も違ってきます。
窓の付属部材を設置するに終わらず、暮らしの中で適切に開閉することが室内環境に大きく影響していきますので、パッシブデザインは設計しておしまい、ではないということです。
4.自然風利用
自然風利用を意識した設計の狙いは、次の2つです。
① 低温の風を室内に入れることで涼感を得る。
② 建物内に溜まった熱を外に排熱する。
どちらからも低温の風を通すほど効果が大きくなるので、自然風利用は外気温が比較的低いときに行うことが有効であることがわかります。
つまり、7月~8月の盛夏には日中に風を通すことを考えるのではなく、外気温が下がる日没から夜間にかけて風を通すことが重要になります。
春や秋の中間期であれば日中でも風を通し効果的に涼感を得ることができます。
ただ、お住まいの地域によりますので、暮らしの中で効果を得られる時期や時間帯を探っていくことが必要です。
また、敷地に一定の風が吹かない条件のところであれば、どれだけ自然風利用のため設計を考えても無駄になってしまいます。
有効に自然風利用するためには、「一定に涼しい風が吹く」点を敷地条件とすることも大切です。
自然風利用の効果を得るためには、適切に窓を開けたり閉めたりすることがとても重要で、暮らし方の工夫で家の中にいい風が通ります。暮らし方でその家の快適さを探っていけるのもパッシブデザインの醍醐味になります。
5.昼光利用
一年中を通して日中はできるだけ照明器具に頼らず、明るい室内空間を実現するのがこの手法です。
昼光利用は2つの手法に分類できます。
①採光(昼光利用の基本)・・・窓を設け、自然光を採り入れる
昼光利用の設計における原則は「できるだけ多面採光を取る」ということです。
ひとつの部屋の複数の面に窓を設けるほど、安定した光環境が得られます。
快適な明るさがどれくらい必要かは部屋によって異なり、一般的には日中の滞在時間が長いLDKは2面採光以上が望ましく、それ以外の部屋でも1面以上窓を設けるということを意味します。
②導光 ・・・建物に入った光を、できるだけ奥に導く(光を拡散させる)
採光だけでなく導光を考えることによって、日照条件が悪い土地での工夫ができ、暗くなりやすい部屋を少しでも明るくすることができます。
導光で最も一般的なのが、吹き抜けです。上の階に入った光を下の階の奥まで導くわけです。
この吹き抜けは空間の広がり(視線の広がり)をもたらすだけでなく、パッシブデザインにおいて自然風利用、昼光利用、日射熱利用暖房の3つの手段に有効となります。
この他にも、明るい部屋と暗くなりそうな部屋の間仕切り壁の上部などに欄間やガラスを設けて光を通したり、天窓や高窓を利用して光を導いたりするテクニックがあります。
こうした手法を利用することで、照明いらずの生活で少し得した気分になりつつ、自然の光を感じながら気持ちよく過ごすことができます。
以上の5つの手法を上手く設計に組み込むことで、最小限の光熱費で、夏は涼しく、冬は暖かく、風が通って、明るい家を実現することができます。
ただし、パッシブデザインは正しい設計や施工によって100点になるわけではなく、重要なのは暮らし方の工夫で効果が最大限発揮されるということです。
SENKOの家づくりでは、パッシブデザインを取り入れた家づくりもご提案しています。
気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。